今年も仕事納めの金曜昼。
前々から目をつけていた洗足のすぎやま。
現在は完全予約制のお店。
駅からすぐの筈なのに…見つからない。
近所の人に尋ねて、看板の無い地下への階段を
おそるおそる降りていき…
扉を開けると…別世界の静寂。
どうやらこの時間、客は私一人。
一枚板の大テーブルを一人で使う贅沢。
窓から降りてきた階段が見える。
低い音で流れるミルト・ジャクソン。
何だか深海にいるような落ち着く空間。
店主が出てきて、まずは飲み物。
日本酒から入るのが王道だろうけど、
下戸の私は「ゆずジュース」を炭酸割り。
爽やかな香りで期待が高まる。
この店は今のところコースの二つのみ。
事前の予約で「そば游膳」¥4000に。
まずは先付けに「蕎麦豆腐」。
もっちりした蕎麦豆腐に餡かけで仕上げ、
貝ひもや素揚げの食感が楽しい。
目に鮮やかな「季節の点心」
前菜が9種盛りになっている。
ご主人が一品づつ説明してくれる。
香りも食感もきちんと仕事してる感が良い。
イクラ沖漬けの皮が、あとほんの少しだけ
薄ければ完璧な自分好みだった。
そして定番の「蕎麦味噌」。
胡桃が仕込んであって、脇にはピーナッツ。
香ばしさがいろんな方向からやってくるのを
さっと流し込む…日本酒が飲めれば!
刺身は「真鯛のカルパッチョ」。
添えてあるのは冬が旬、縮みホウレン草。
ソースに和の仕事。
「天婦羅」は二種。
子持ちのワカサギは予め味をつけてある。
北海道の氷上で昔釣ってたの思い出しつつ。
カボチャは塩で。
このカボチャはよくあるネットリ系ではなく
ホクホクになってた。
「せいろ」は挽きぐるみ蕎麦。
蕎麦殻の星が飛ぶ香りの強い蕎麦。
キラキラとエッヂが光る美しさ。
蕎麦湯は濃い目。
辛汁は敢えてかえし抑え目で蕎麦の香りを
邪魔しないバランスを狙ってるのかな?
蕎麦湯で割るとまた印象が変わる。
最後の甘味は「栗の渋皮煮」。
カボチャのきんとんは甘さ控えめ。
天婦羅のものと同じかな?
栗とのバランスが良い。
店内の低音Jazz、あえて“点心”と呼ぶ前菜、
蕎麦と薬味の供し方、蕎麦湯…
分かる人にはすぐ「立川・無庵」の仕事を
連想させるでしょう。
こちらの御主人は無庵の料理長を経て
この場所で独立して1年半だそう。
ちょうど10年前、ウチの会長夫妻が無庵の
コースを食べていたので、その時の画像と
見比べてみると、蕎麦のスタイルそっくり!
御主人に尋ねると、まだその頃は無庵には
入店していないとの事。
無庵は行く度にスタイルが変わる印象だけど
基本はちゃんと受け継がれている、のかな。
来年3月からはアラカルト対応も始めるそう。
御主人お一人で回している現在のスタイル、
オペレーション大丈夫?と心配しつつ、
気軽に来店できるのは嬉しい。
今の店のこだわりも失わないで欲しいけど。
東京都目黒区洗足2-23-10 B1F
03-3788-6938
11:30〜14:00、17:00〜20:00、要予約